意外なお宝発見!? 民団左京支部でフリーマーケット初開催
WEB配信 2021年11月18
         
               多くの地域住民がフリーマーケットに訪れ、賑わいを見せた
                     (10月3日、韓国民団左京支部会館前)
 韓国民団左京支部(京都市左京区・金高子支団長)は10月3日、支部初となるフリーマーケットを同支部会館で開催した。昨年12月に発行した弊紙第110号では、深い民族愛をもち、はからずも弱冠29歳で支団長就任した金高子さんのドラマチックな半生と人物像、そして陰に陽にサポートする金政弘京都本部団長執行部・左京婦人会(金海順前会長・現常任顧問)の手腕にスポットを当て、反響を呼んだ。掲載から約一年、コロナ感染が猛威を振るったこの間、何を思い、感じてきたのか。成功裏に終えた当日のイベントの模様とあわせて、金支団長に現在の胸の内を聞いた。(取材=李善諭)
     金高子支団長
 ――イベント開催に至った理由をお聞かせください。
 金高子団長(以下「金」)コロナの影響でなかなか対面行事ができませんでしたが、「何もしなければ何も起こらない。少しずつでも動いていこう」という考えのもと、感染予防対策を十分にとった上で、開催を決意しました。
 ――構想から開催に至るまで、準備にかかった期間は。
 金 6月に合同会議の議題としてあげ、物品募集やポスター作製等、開催まで約4カ月かかりました。
 ――物品の主な提供者は。
 金 団員や、支部を出入りされている韓国語教室の生徒さんがメインです。他に民団の存在を知る、韓国に興味のある日本の方など、皆さんの協力で思いのほか沢山の物品が集まりました。
 ――キンパやチヂミの販売も、大好評でした。それぞれおいくらで、何人分用意されたのですか。
 金 キンパが1本400円、チヂミが1枚300円です。予約販売も含めて、各200人分準備しました。婦人会の方々にもご協力いただき、もともと人気のあったキンパとチヂミを販売することになりました。その日、高校野球秋大会があり、ランチに支部役員手作りキンパを食べながら応援されたという話も聞いています。応援チームの優勝という結果も出て、嬉しかったですね。
 ――イベントを振り返ってみて、いかがですか。
 金 利益+集客=フリーマーケットだと思い至ったのは良いものの、ポスター告知やLINE配信、口コミだけで本当に集客と収益性が見込めるのか、とても心配でした。私の短所でもある「結果を求める癖」が出てしまい、この4カ月間はフリマのことばかり考えていました(笑)。でも、終わってみれば沢山の方にお起しいただき、物品と食品あわせて18万円もの利益を出すことができました。支部役員全員、今回のイベント開催の成功を誇らしく感じています。振り返ると、やはり支部の団結力の強さが支部存続において必要不可欠だと強く実感しました。団長である私はもちろん、支部に出入りされている役員、団員、そして近隣の方々までもが「支部愛」をもち、当支部が抱える経済難を打破し、なんとか伝統ある支部を守り続けていきたいと気持ちが一つになったことが、成功という結果につながったのだと思います。本当に、感謝の気持ちでいっぱいです。

              
              左から趙清美婦人会京都本部会長(オブザーバー参加)、金高子
                 左京支部団長、宋輝子同婦人会会長(執行委員)、金允子同
                 婦人会副会長(執行委員)、金延洙同婦人会監査、安田富子
                 婦人会広報次長


 ――支団長としての残りの任期は。
 金 あと半年ほどです。
 ――昨年12月以降、その後の周りの反応はいかがですか。
 金 昨年、記事として取り上げていただいてから、支部内外で幅広い年齢層の方々から励ましのお言葉や、多方面で協力いただける機会が増えました。支団長という立場から見て、支部活動を活性化するにあたり、どれだけ沢山の方が支部の活動を知っておられるかという部分は非常に大切ですから、こうして取材していただける機会はとても貴重だと思っています。
 ――恐縮です。もちろん悩みや苦悩も多々おありだと思いますが、いかがでしょうか。
 金 やはり次を担う世代の発掘が日々の課題であり、団長としてやり残してしまっていると感じる大きな悩みです。また、支部運営を続けるには男性の力も必ず必要になってくるのですが、現在は圧倒的に女性参加率が高く、少し懸念せざるを得ないのが実情です。中心には立てずとも、サポートが可能な男性陣は必要なので、これからは次世代+男性役員を増やすことに重点を置かなければと考えています。
 ――団長という重責を担い、辛くはありませんか。
 金 何事にもまずトライしてみる姿勢を崩さずにいますが、「本当にこれで良いのか」と、プレッシャーの大きさから正直、しんどくなることはあります。最近、夢のなかでも民団のことが出てくるので、これは重症だなと(笑)。役員の方々にもなるべく負担をかけないようにとは思うのですが、本業がある為なかなかそうはいかず、事務担当の職員の方を含め、日々助けていただいています。全ての執行役員が「若い団長を支えよう」と言いながら、物心両面で支援いただいていることにも感謝しています。
 ――今後の展望は。
 金 若い世代を迎え入れることが一番の目標です。引き続き、支部への人の出入りを増やす為、オリニ韓国語教室や、オンラインでの文化講座等も検討しています。
 ――ただでさえコロナ禍で身動きが取りにくいなか、本当に意欲的に活動されていると思います。
 金 周囲からも「今のままで十分頑張っている」「これ以上やらなくてもいい」と言っていただけるのですが、つい一人で思い悩んでしまうこともあります。でも、(団長に)「なりたくてなったのではない」という思いが強かった当初に比べ、今は「なった以上、責任感をもって任期を終えねばならない」という考えに変わった為、そんな考えが頭をよぎるのかもしれません。
――私生活での変化はありましたか。
金 あまりないですが、今まで民団について知らなかった親友たちも、連絡を取り合う中で私が頻繁に「民団」というワードを出す為、今では何も言わなくても「今日も民団?」と聞かれることが多くなりましたね(笑)。
――金団長の存在は、若い世代と諸先輩方をつなぐ橋渡しの意味でも、大きな役割を果たしていると思います。
金 20代女性でも支団長を務められたのだという現実が、民団のこれからを考える一つのきっかけになったのではないでしょうか。課題はありますが、それでも私は、未来の若者たちに希望をもっています。
――最後に一言。
金 この3年で、情報の発信力がどれほど大きな効力をもつかを実感しました。過去にはなかった支部便りを発刊し、誰でも気軽に足を運べる憩いの場であることをアピールするなどした結果、今まで足が途絶えていた団員の方々にも足を運んでいただけて、抜群な効果を感じています。また、効果や結果を重要視するだけではなく、行動を起こすこと自体に重点を置き活動してきたからこそ、今があるのだと思います。残りの任期も、できることをできるだけやっていきたいです。
――ありがとうございました

         
         
               皆さんで、記念撮影

【取材後記】
 支団長就任以来、様々な企画を立案・実行し、伝統を受け継ぎながらも新たな気風を取り入れ、支部活性化に尽力し続ける金高子団長。今回の取材現場でも、団長はもとより、役員、婦人会の皆さま方には温かく迎え入れていただいたことを、まずもって感謝申し上げたい。
 金団長も言われていたことだが、全国に数ある民団支部のなかでも、これほど連帯感、団結力、そして温かみと気骨のある支部は、そうないのではないだろうか。コロナ禍でどの支部も思うように活動できないもどかしさはあると思うが、一つのモデルケースとして、良い意味で「うちも負けてなるものか」「こういうことなら、できるのではないか」と少しでも刺激になり波及してくれれば、これほど嬉しいことはない。

【雑 感】
 在日コリアンの人口は年々減少しているのは事実だが、それがイコール在日の消滅、同化につながるかといえば、必ずしもそうではない。朴一大阪市大教授によれば、「昨今の在日コリアンの男子学生のなかには自らの出自をアピール材料にし、『俺、在日なんだ。在日って知ってる?』と女子の気を引き、デートへの誘い文句にしている」例も見受けられるという。いわゆる「先祖返り」現象とでもいうのか、事実、記者の10代の姪っ子たち(父は日本人・母は韓国人)も熱心なアイデンティティ教育を受けた訳でもないのに自ら語学学習に励み、韓流アイドルに目を輝かせ、休みの日にはコリアンタウンに出かけたがる。かの橋下徹元大阪府知事も「子どもたちは家で朝から晩までBTSの曲を流し、コロナ禍のため旅行代わりに大阪・鶴橋のコリアンタウンに連れて行っている」という。
 勿論、橋下氏が指摘するように「きちんとコミュニケーションをとるためには『好き』の感情だけでなく、日韓の歴史勉強が必要」であると思うが、姪っ子たちのそうした様を見ていると、まず仲良くなるための入り口、きっかけとしてはこれでいいのかもしれない、とも思う。
 文化は、政治を超える。「解決せざるをもって、解決したとみなす」とは1965年の日韓会談で、竹島・独島問題について当時の河野一郎国務大臣と丁一権総理の間で交わされた言葉だ。「一時的な棚上げ」といえば聞こえは悪いかもしれないが、なにも「永遠に臭いものには蓋をせよ」という意味ではない。歴史・領土問題と民間の文化交流は別物として捉え、まずは互いに気心の知れた仲になり、円滑な議論を行う為の「友好関係」を構築することが肝要ではないか。
 閑話休題、先の取材の帰り際、お土産でオモニたち特製のキンパと、ピリリとした辛口生地がクセになるチヂミをいただいた。その日の晩酌では漬物にキムチとたくあん(べったら漬け)を添えたが、辛いキムチを食べると次は甘いたくあんが食べたくなり、甘いたくあんを食べると、今度は辛いキムチが食べたくなった。もはや口の中は甘いのか辛いのかよく分からなくなっていたが、その状態で口に放り込んだキンパとチヂミは格別のおいしさだった。ふと、三国志で有名な「桃園の誓い」のワンシーンを思い浮かべた。絵空事だが、いつの日か日中韓の3トップ(できれば米・露・北も)が某境界線のひらひらと花びら舞い散る宴席で、日本酒、マッコリ、紹興酒を酌み交わしながら談笑・論議できる日がくればどんなによいだろうか。そんな空想にふけてしまったことを蛇足ながら付け加え、結びとさせていただきたい。