2007年10月31日号
社会福祉善行活動の実施を
尊敬・信頼される在日コリアン像形成へ
  本紙は愛知万博でコリアン文化の魅力を世界に発信した   (2005年6月1日愛知万博EXPOホール)
■参政権は当然の事と世論化
 今年7月の参議院選挙のとき、知り合いの日本の女性から「公明党を支援しているのですが、一票投じていただけないでしょうか」との選挙協力の電話があった。在日には選挙権がないことを知らない彼女にどのように答えようかと考えた。
 「そうですか。私ども韓国人は外国人ということで選挙権がないんですよ。ですから、投票したくてもできないのです。外国人が投票できるように運動してくださいよ」と切り替えした。
 「本当ですか。知らなかったです。すみませんでした。日本人って冷たいですね」という彼女の返事に、「そうですね。でも日本人全部が冷たいわけでもないでしょう」と応えながら、「やはり、地域住民としては選挙権ぐらいはあった方がいいですね」と訴えた。
 周知のように総連は同化につながるとの論理で地方参政権に反対している。筆者自身も以前は「ないよりはあったほうがいい」程度の思いしかなかったが、今年5月に、本紙主催の多文化共生フォーラム「地方参政権の実現に向けて」を実施以来、「市民社会の一員として当然の権利であり、日本社会の近代化に繋がり、多文化共生時代の今日、他の外国人の人権確立のためにも実現してほしい」という思いを強くした。
 要は、実現に至る過程でどうしたらいいのか、どのような運動を展開したらいいのかが肝要である。そして、日本人の多くに「在日韓国人、在日外国人の皆様とともに、地域社会の平和と発展に向けて、ともに力を合わせていこう」と認識を新たにするためにどうするのか、ということではないだろうか。さらに「在日コリアンの方々は良い人が多い。選挙権は当然のことだ」と世論化しながら、在日コリアンへのイメージをどう高めるかにある。
 
■尊敬されるモデル 鄭煥麒氏と姜仁秀氏
在日を代表する名士 鄭煥麒愛知韓国学園名誉理事長(右)と姜仁秀八千代病院理事長(左)
 先だって、広島県安芸高田市にある老人ホーム、メリィハウス八千代の落成式を取材した。姜仁秀理事長はあいさつで「病院の開設にあたって17年前に当時の町長と@地元の人々を優先的に雇用するA物資の調達は地元からB町の行政への理解と協力という3つの約束をした。このことを現在でも一貫として守ってきている」と述べた。
 駆けつけた児玉里太郎安芸高田市長は「雇用の半分は安芸高田市からで、地域行政の協力など地域経済の活性化に多大に寄与されている」と絶大な賛辞を贈り、「メリィハウスと連携しながら医療福祉の充実を図っていきたい」と語った。
 病院発足当時は、町民からの理解が得られず「朝鮮人がこの町に病院をつくるとは何事か」といわんばかりに猛烈に反対されたという。姜仁秀氏は、意を決して病院設立に向けて署名運動を展開した。「応援したい」という声が次第に大きくなり、苦労に苦労を重ねながら建設にこぎつけた。ある婦人が「先生すみませんでした。以前は朝鮮人の病院ということで差別しましたが、家族が入院して本当によくしていただきました。感謝しています。私が悪かったです」と姜理事長に謝ったという。
 姜理事長は「差別するような相手ではなかったと、相手が心底気づいたときに差別はなくなると思います。地域社会に生きている我々一人ひとりが、日本人から尊敬されるようなことをせずして、権利の主張ばかりしてはみっともない」と権利要求が先走る一部の同胞の運動形態を戒める。
 名古屋の鄭煥麒氏は平素から「差別されないよう、立派な人間になること、尊敬される人間になることが差別をなくす道だ」と力説している。「差別はどこの国、地域にもある。韓国でも慶尚道、全羅道、済州道だといって地域対立の感情が根強いものがある。日本は、ある意味で民主的な国で良いことをすれば尊敬する面がある」と差別を乗り越えていくには、尊敬される人間への形成が大事だと主張する。
 筆者も全く同感の至りである。そうは言っても、日本で韓国人が食べていくのに必死で、ときにはやむを得ず法を犯したりすることもあるだろう。しかし、人間として生まれた限り次世代への教育もある。日本で定住していく運命にある在日コリアンは、地域社会から少しでも尊敬され、愛される人物になるよう懸命に努力することが大切なことと思われる。
■在日のレベルアップへ
 渡来文化を熱心に研究しているNPO法人東アジア古代史研究会の佐藤清理事長はこう述べる。「在日の皆さんが地方選挙権の行使などは当然のことです。古代に日本国が成立したとき、百済、新羅、高句麗から多大な技術と学問が渡来してきました。東大寺一つ見ても聖武天皇の指揮で百済の方が建立されました。文化の伝来なんてものではなく、国づくりの中核にいたわけですから、日本人は皆歴史を学び感謝しなくてはいけない」と在日を常々と励ましている。大阪の枚方市に居住する佐藤理事長は近くの百済神社の入り口に、百済王銅像と歴史資料館建立の必要性を唱えている。
 現天皇が68歳の誕生日に「桓武天皇の母方の高野新笠は百済の子孫であることにゆかりを感じます」とするゆかり発言を述べられた。日本と朝鮮半島とのルーツの共通性に言及したのは記憶に新しい。いずれ、天皇は訪韓し日本の祖先の墓参りへ行くのも、そう遠くない日に実現することを期待する。
 古代の奈良平城京設立の頃には、すでに日本の伝統工芸技術のほとんどが形成されたと言われている。仏像、寺院を建造する高度の技術水準を大陸の古代の先人たちは持ち合わせていたのだ。
 明治に入り、福沢諭吉に象徴されるように、アジアへの蔑視、西洋崇拝の小中華思想が根強く浸透されていた。第二次世界大戦では軍部の暴走により軍国主義への道へと走ってしまった。国、民族として非力だった朝鮮は列強による分断統治を経て二国化。今日に至っても分断が続いている。
 我が民族は歴史の受難を克服すべく、祖国の平和統一を成就し、そしてアジア、世界平和へ寄与する運命を担っている。在日はとくに東西冷戦、悲劇の象徴であった。しかし今後は、日本という地域で南北祖国を等監視しながら、良識ある日本の人々とともに正しい歴史観を樹立し、日本と朝鮮半島をつなぐ歴史的文化的役割を担える存在であると信じる。
愛知万博成功に貢献したとして本紙に豊田
章一郎協会会長から感謝状が授与された 
 本紙も世界へ向けて在日コリアンの文化発信とコリアンのイメージアップを目的に2年前、愛知万博の公認イベントとして「コリアンワールドフェスティバル」を会場内で開催し、閉幕後、万博協会の豊田章一郎会長から感謝状をいただいた。古代の文化大国の末裔であることを自覚し、少しでも文化事業を展開していきたいと願っていただけに、喜びもひとしおだった。
 東京在住の金昭夫氏が経営する金嶋観光グループでは社員全員が毎月の給与の3%を天引きしユニセフへ寄贈している。実施してから約20年経過しているが、社員全員が実施しているケースは日本の社会でも少ない。このような社会への善行を一人ひとりが実施していったら在日コリアンへの社会的地位は高まることはあっても低くはならない。
 末尾にあたって、@定住外国人地方参政権実現に向けて「1千万人署名運動の大展開」A在日コリアンイメージアップに向けて「社会福祉善行活動」の実施という2つの運動を提起したい。