2009年3月18日号
 19歳以上の在外国民に大統領選挙と国会議員比例代表選挙の投票権を付与する在外国民投票関連法改正案が2月5日、国会本会議を通過した。
 従来は韓国国内に住民登録した国民だけが投票権を持っていたが、憲法裁判所が07年6月、住民登録の有無で選挙権付与の可否を決める現行公選法は違憲と解釈した。
 投票権を得る在外国民は約240万人で、国内の有権者の約6%。改正法によると、韓国籍をもつ19歳以上の永住権者全員に大統領選挙および国会議員比例代表選挙の投票権を付与し、国内に住民登録している一時滞在者については地域区(小選挙区)国会議員選挙にも不在者投票に准ずる形で参加可能。
 地方自治体の管轄区域に国内居住申告を行った在外国民に限り地方選挙でも投票できる。在外投票の方法は、有権者の居住国にある韓国公館での投票を原則とし、不可否の場合は別の施設に投票所を設置する。郵便投票は受け付けない。  

 
沸騰する本国参政権賛否両論
 
 在日が本国参政権獲得に取り組んできた団体として在日韓国人本国参政権連絡会議がある。
金信纒寞c長は「在日社会にとっては歴史的な第一歩であり、これから本国との関係を新しく築くことのできるスタートです。本国の投票権を得るということは韓国国籍をもった私たちの基本的人権、権利であるということです。選挙権の方が納税や兵役よりも国民国家を構成する人権として、はるかに基本的なものだと憲法裁判所は言っています」と賛成論を積極的に論じている。
 一方、反対派の急先鋒である高英毅弁護士は「国家や自治体などが支配を及ぼすということ。つまり税金を取ってお金を徴収する、犯罪を犯したら刑務所に入れるといのは公権力が個人の意志に反してやっている訳です。それならば、参政権は支配を受けている公権力に向かって獲得しないと意味がないわけです。国政も含めて、この日本で参政権を取らないとダメなのです。それが民主主義の理念です」と真っ向から反対している。
在日同胞の反応は様々だ。ある大学教授は「反対するのはおかしい。民族反逆者だ」と切り捨てている。「在日の諸権利を要求する良いチャンスだ」「在日に本国の政治が持ち込まれる。投票するというシステムを活用する訓練ができていない」と様々な意見が飛び交っている。
 日本の知識層には、自国民であっても、母国と定住国の二重投票を認めていない一部の外国の例を挙げる学者も出ている。つまり、自国の参政権があるなら日本での参政権は認められないという主張だ。
 民団は地方参政権獲得運動を起こして16年になる。本国政府は大統領をはじめ諸人士が来日した際には必ず「地方参政権を支援する」と力強く言ってはいるが、今回の法案通過は結果的には地方参政権獲得運動に冷や水を浴びせる形になっていると言わざるを得ない。
 在日が海外国民として、本国の選挙に投票権を得られたということは歓迎する。しかし、本国を知らない世代が圧倒的に占める現状と未来を考えたとき、本国の投票権に対しては賛成とも反対とも言い難い複雑な心境にならざるを得ない。

生きがいこそ最大の贈り物
 
 産経新聞で、「20年後の日本がどうなっているか」という連載があった。
 ひるがえって在日の20年後はどうなっているのだろうか。70代以上の1世は皆無になるだろう。日本生まれが99%になるのは自明の理だ。3、4、5世に祖国とは何かが突きつけられてくる。に祖国とは何かが突きつけられてくる。民団、総連はどうなっているのだろう。両組織は分解し、最終的に残るのは民族教育の現場、民族学校かも知れない。
海外同胞700万人の内、在日同胞は特別な歴史経過をもっている。東西冷戦、分断の落し子ともいえる。また、在日同胞は南北両政権に翻弄されてきた歴史といえよう。日韓条約締結も在日同胞を担保に取っての条約である。
 在日同胞の帰国事業も共和国政府の国家的拉致といっても過言ではない。日本移民学界でも、日本の戦前のブラジル移民事業は国策であったと、唱えていることと符号する面も否めない。
 そうした本国の国家権力に翻弄されてきた関係を既存の民団、総連は払拭すべきではないだろうか。日本という地域で同胞の次世代のニーズに見合った休心体の組織再編も考えていくてはならない
 最大の贈り物は未来の若い世代に、夢と希望を持って喜んで日本の地で生きていける生きがいではないだろうか。1人ひとりが20年後を見つめて語り合っていこうではないか。