■オピニオン |
2023年2月20日
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在日韓国人「世界史創造」へ挑戦 文化芸術の真摯な取り組み
本紙代表 李 相 善
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数年前にフランス文学者の鈴木道彦氏に東京都内で面談したが、会うや否や90歳近い鈴木氏は「在日コリアンは日本植民地統治の歴史の落とし子、縮図ですよ。我々、日本国民は在日コリアンの真の解放のために戦っていかなくてはならない。在日韓国・朝鮮人問題は日本国民自身に向けられた戦後処理の問題です」と語った。
同じく東京都内に居住している歴史学者の内海愛子さんは、朝鮮人BC級戦犯の記録の著者だが、その著書のなかで「朝鮮人が日本の戦争責任を問われて戦争犯罪人になっている。戦犯といえば、東条英機や岸信介という名前しか思い浮かばなかった私は『朝鮮人戦犯が存在する』その事実に衝撃を受けた。日本人が植民地支配の責任を問われるなら話は理解できる、しかし事実は全く逆である。日本軍に徴用された朝鮮人の軍人と軍属が戦争中の行為を問われて戦争犯罪人となったのである」と義憤を隠していない。
内海さんから頂いた世界史の考え方の書物のなかに、「BC級戦犯とされた朝鮮人当人たちと直接に向き合い、彼らのライフストーリーを聞き取り、その歴史を残す内海の仕事は、まさに植民地責任を果たそうとする実践であり、これまでの誰もが成し得なかった新しい世界史を切り拓く営みであります」と記されてあった。
内海さんとお会いして疑問に思っていたことが解明された。前々から「どうして日本人が朝鮮人のBC級戦犯のことを我がことのように向き合っているのだろうか」と疑問だったのが、「内海の仕事が世界史を切り拓く営みである」というフレーズに、我の頭脳にピンと来たのである。
先ほどの鈴木道彦氏も、フランス留学中に植民地のアルジェリア戦争に出くわしてから、在日朝鮮人問題に遭遇したのである。きっかけは1958年、千葉で女子高生が殺害された小松川事件。逮捕されたのは19歳の李珍宇という在日朝鮮人の少年だった。フランスでアルジェリア問題を研究しているときに在日朝鮮人問題に目覚め、在日問題や李珍宇事件に関わったと「サルトル・在日と余白の声」の書物で紹介している。
もう1人、記述しておきたい人物がいる。弁護士の戸塚悦朗氏である。戸塚氏は「慰安婦問題と戦時強制動員の問題はILO条約違反の犯罪で、不法な植民地支配下で起きた重大なヒューマンライツ侵害であって、国際法の不法行為です」と指摘している。
そして日本はなぜ、人間の国際的普遍価値である人権が国民に浸透しないかは、戦後の国際人権の普遍的理念価値ヒューマンライツを「人権」と勝手に解釈し、日本国籍以外は人権を認めないという、自国ファーストに陥っているからだという。明らかに世界人権の普遍的価値を認めない。戸塚氏はコリアンワールドと共同企画で「外国人のヒューマンライツ」を出版するが、「ヒューマンライツの本来の人権のあり方を啓発していく」と意欲的に語っている。
世界の平和問題の解決に本紙も参画
昨年2022年1月22日に核廃絶を目指して、核兵器禁止条約発効1周年記念シンポジウムを平和学者・立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長の安斎育郎氏、朝日新聞・核と人類取材センター事務局長の武田肇氏を招き、国際セミナーを京都で開催した。
在日韓国系の言論紙としてアジア、世界の平和問題に少しでも参画したかったのである。今年6月25日には2回目の国際平和セミナーを企画している。安斎育郎氏らを招き、広島の平和資料記念館で開催する。
昨年11月25日に開催した奈良・飛鳥の橘寺での「聖徳太子1450年生誕祭」では十七条憲法を学びながら、古谷正覚法隆寺管長、森川裕一明日香村村長、神居文彰平等院住職、高内良輯(りょうしゅう)橘寺住職、生駒京子関西経済同友会代表幹事の諸氏を招き、東アジア歴史・文化フォーラム(弊紙・YouTubeチャンネルで公開中)を開催した。橘寺・高内住職は、祈・世界平和を唱える平和スプーンを作成し、世界平和を訴えている。
ロシア・ウクライナ問題もあり、アジアに戦争が飛び火しないよう願うばかりである。アジアの平和に関しては、日本が軍備増強に舵(かじ)を切り、岸田政権は米国との従属の下、戦争の道へと大きな賭けに出ている。
北朝鮮も連続的なミサイル、核の砲艦外交は、結果的に日本の軍備増強を後押ししているようになっている。北朝鮮は核戦略を放棄し、平和経済資源、観光外交へ転換すべきであると本紙は主張する。
在日コリアンの世界史的役割を
関西経済同友会の生駒京子代表幹事は昨年の「聖徳太子1450年祭」の東アジア平和フォーラムで「飛鳥へ来て、心も洗われている。長崎の津島へ行ってきましたが、対馬の海はゴミの累積で汚れていました。その一部のゴミは韓国から流れている模様。日韓は共同で環境問題の解決に取り組むべきだ」と切実に訴えている。
今や世界はロシア・ウクライナ問題による東西の平和構築をいかにするか、格差、気候変動問題など、グローバル化は80億の地球民は解決すべき問題が山積みだ。少なくとも、人類の生存あってのことであり、平和構築は第一義的に解決していかなくてはならない。それには限りない対話が必要であり、独善、覇権による武力仕様を優先すべきではない。人類1人ひとりの理性と叡智が求められている。
民族学校の白頭学院建国高校の学生が核兵器禁止条約の意義に賛同し、ウィーンの高校生らとリモート交換しながら、マスコミでも話題になっている。在日韓国人として1人ひとりが諸問題の地球的課題にいかに参画しうるか、共に考え、前進していきたい。
「災忌の絵画史(中野京子・日経プレミアムシリーズ)」の冒頭分を紹介したい。「パンデミック、飢餓、天地異変、戦争・古来の人類は災忌と戦ってきた。画家はそれを連綿と描き続けてきた。人類は災忌に対してどう行動し、どんな破り方をし、どうやって乗り越えたか、あらゆる芸術がそうであるように、そこには人間の本質をとらえようとする真摯な試みが見られる」と記述している。
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