崔　私の父親はフランス系米国兵で母親は北朝鮮出身です。２人は米軍政のときに知り合い、私が生まれました。

父が亡くなり、１９４９年、３歳のときに母と日本へ来ました。母は61歳で亡くなりました。私が今66歳ですから、母が生きていたら97歳です。私は兄弟もいなければ、実の父親の名前も知りません。写真も何も残っていませんでした。

横浜で母は女手一つで懸命に私を育ててくれました。毎日繁華街で、表に立って外国人を呼び込むんです。でも当時はそれしか生きる術がなかった。学校は中学１年までしか通っていません。自分も早く働かないといけないと思っていました。

それで16歳のときに塗装会社に勤めて、23歳のときに独立しました。塗装業を選んだのは、当時すぐに食べられるお金が欲しかったからです。給料も良かったですしね。それからはこの道一筋の人生です。余計なことは考えませんでした。

――現在の国籍は。

崔　元は北朝鮮籍でしたが、今は韓国籍です。その方が北にも南にも行けるからという理由で韓国籍に変えました。ただ韓国人だから、朝鮮人だからというのではなく、人間は皆一緒だと私は思っています。

――ご家族は。

崔　娘が２人いて、娘婿は韓国系米国人です。子どもには１歳半から英才教育を施していて、今は今六本木ヒルズの幼稚園に通っています。おそらく娘達はこれから日本を出て行くでしょう。

実はロサンゼルスにもう自分の墓を買ってあるんです。実際、ロサンゼルスに墓を買う韓国人は多いんですよ。私が死んだら、骨も何もかも向こうに持っていく手はずになっています。

�� 車に記した文言を指す崔さん �� 暗殺された明成皇后(閔妃)の悲劇を表す文言

　――愛車のボディには「明成恨」とペイントされていますね。

崔　李氏朝鮮第26代王・高宗の妃、明成皇后ですね。意味は、やはり恨みですね。殺された人の奥さんの気持ちというのは、なんとなくわかる気がします。だから私は、日本人がこれは何ですかと訊かれたらはっきり言いますよ。これは26代目の韓国の王様の奥様の名前だと。これ殺したのは日本兵だよ、と。

仮に天皇の母親が殺されたとしたら、日本人は黙っていますか。世の中が騒乱しますよ。私がこの車に乗っていると、後ろから車が追いかけてきて、この字をじっと見る人がいます。１８９５年に日本守備隊による残虐行為（閔妃事件）があったということを日本の教科書にぜひ書いてほしい。

――崔さんが日本に来てから勃発した朝鮮戦争について思うところが大きいのでは。

崔　お互いに殺し合いをした朝鮮は馬鹿なことをしたなと思います。ドイツの場合、殺し合いはしなかったでしょう。そんな馬鹿なことしたから、いまだに南北関係が難しいままなんです。

――南北統一については。

崔　それは統一した方がいいとは思いますが、韓国に今、それだけの力はないでしょう。国民性の問題もあって今、急に（統一を）やって、ここは俺の土地だ、あんたの土地だとやると、おかしくなってしまうでしょう。

韓国の大統領選挙はもっと早くやるべきだったと思います。それをダラダラとやっているから、日本は韓国人も日本人と混ぜてしまおう、と思ったんでしょう。ところが韓国も力がついてきたものだから、混ぜることができなくなったわけです。

――韓日間で歴史認識の問題がよく話題になりますが。

崔　今やドイツ、ユダヤ人もお互いに尊敬し合っています。ユダヤ人の虐殺などを政治家が少しでも肯定したら、犯罪になってしまうんです。日本も、同じように韓国朝鮮を侵略した歴史はなかったと政治家が言おうものなら、これは犯罪にすべきです。もう少し日本人は中国人、韓国人の立場になって、いろんなことを勉強してから判断してほしいと思います。間違っていることは間違っていると、認めないとしょうがないですから。

それにはっきり言うと、歴史を辿れば日本人というのは、百済人なんですよ。ただ日本人が知らないだけであって。高句麗、百済、新羅があって、新羅と高句麗が手を組んで、百済をやっつけた。その百済が負けて、多くの百済人が日本に来たわけです。それで、口伝えで頭に来ていて、「朝鮮は嫌いだ」という恨みとして現在まで残っている。

日韓は数千年にまたがって友好と憎悪の歴史が繰り返されたわけだが、やはり次世代の教育のため、欧州のドイツとフランスのように、韓日は共通の歴史教科書をぜひとも作成して、実際の授業で使ってほしい。

――従軍慰安婦問題については。

崔　日本兵と性の相手をして、でもそのまま放り投げるんじゃ可哀そうだから、小遣いはあげるよということです。お金で買ったわけだから、強制的でもなんでもないと。金を払えばそれで終わりだというのが、日本の考え方ですよ。なにかあれば、金をやるから黙れと。この問題を解決するには、韓国がもっと経済力をつけて、日本に発言力をつけていくほかないと思います。

――朴槿惠大統領についてはどう思われますか。

崔　歴史問題で、断固としてはっきりさせるというところがいいですね。それと、父朴正煕氏の語った言葉の中で「植民地されたからといって、日本人だけを恨んではいけない。それよりも支配を許した韓国人を恥じなければならない」という表現がありますが、そのニュアンスを噛みしめています。

――在日同胞に言いたいことは。

崔　もう少し自分の国のことを勉強してほしいと思いますね。韓国人であることを隠さないで、誇りを持って生きていくことが大切なことです。堂々としてほしい。

――ありがとうございました。