2011年1月20日号

                第3回文化祭で生徒全員が音楽教員のオリジナル曲を合唱
 
 2008年4月に開校したコリア国際学園(文弘宣理事長 金時鐘学園長 嚴敞俊校長)=通称KIS=は今年4年目を迎える。4月には学校法人(各種学校)の認可を取得する予定だ。「境界をまたぐ越境人」の育成を建学の精神とする同学園は生徒数40人という少人数だが、生徒、教師、理事陣らが団結し、順調に発展している。何よりも生徒らが生き生きと輝き、充実した学園生活を送っている。同学園初の大学進学先も韓国、欧州と多彩でコリア系インターナショナルスクールとして着実な実績を上げている。


運営安定させた経営陣


 昨年12月17日、大阪府私立学校審議会でコリア国際学園の「学校法人および各種学校設置認可に関する審査」が通過した。今年の4月には正式に認可の運びとなり、同学園の発展に向けて大きな弾みとなる。法人として正式な学校として運営ができ、内外の印象はもちろんのこと、各種学校としての補助金の申請、生徒募集、海外の学校との姉妹提携など実益としての効果面は大きい。
 文理事長は「苦しさをあまり気にせず、先生も職員も絶対にやり遂げようという思いがあった。そして、生徒たちが折れなかったことです。子どもたちの姿を見て毎日励まされました」とこの3年間を振り返る。
 学園運営の舵取りを任されるのが理事陣だが、文理事長を柱に李康烈氏、都相太氏、金淳次氏ら商工人が卓越したマネージメント力を発揮している。
 日常業務の運営体制も磐石で洪敬義専務ら優秀なスタッフが実務面で支えている。洪専務は2005年度の準備段階から携わっており、同学園設立の提唱者の1人、故金敬得弁護士と学校のコンセプトなどについて討議し、文理事長らとともに、設立実現に向けて会合を重ねてきた。
 設立当初は順風満帆の船出とはいかなかった。2008年度4月7日の第1回入学式は、校舎完成が間に合わなかったため、最寄りのホテルで行った。入学式の翌日からは韓国・京畿道のアヒムナ平和学校で、50日間にわたる授業を行うなど大胆な試みを実施した。生徒、教員らは苦労を少しも感じさせず、韓国での授業をこなし、たくましさを見せた。
 地元住民の一部からは「朝鮮人は来るな」「北朝鮮のスパイ学校をつくるか」と心無い誹謗、中傷が飛んだ。そうした決して恵まれた状況下でのスタートではなかったが、スタッフらは粛々と学園を前進させていった。この間、スポーツ大会開催、地域住民参加のキムチ作り講座実施、地元自治体主催のイベント参加など地域社会との交流も積極的に展開し、周辺との親和性を深めてきた。
昨年12月11日に、関西ローカルの毎日放送の情報番組で同学園が紹介された。同番組で嚴校長は「朝鮮半島と日本が和解し、そのためにこの学校の生徒たちが国境をまたいで繋いでいくことを期待します」と述べ、生徒の1人は「早く北と南が1つになってほしい。私が向こうに行ったら1つになっていることが私の願いです」と語っていた。
 放映後、「ぜひ学校見学に行きたい」「資料を送ってほしい」との問合わせが相次いだ。

徹底した語学教育

 同学園の最大の特徴として、徹底した語学教育があげられる。コリア語、英語の授業はネイティブ教師により精鋭指導されている。ユニークなのはクラス編成だ。学年の枠を取り払い、生徒の習熟度よってクラス分けされている。
コリア語は厳校長をはじめ朴永Q氏、羅卿化氏、李星坤氏の4人の教員は本国出身。英語はノエル・スラッテリー氏、ナ ージャ・マレー氏、モーガン・ダットソン氏の3人の教員が担当している。
中学、高校とも英語は週10時間、コリア語は週6時間を編成している。英語は通常の学校の2倍以上の時間を設けている。授業中はすべて当該言語のみの使用だ。
 英国人のスラッテリー先生は「生徒らが飽きないように映画なども教材に取り入れてます」、コリア語の朴先生は「少数精鋭のクラス編成なので生徒にきめ細かく親切丁寧に指導できます」と話す。
 1学期3ヶ月間を過ぎれば、コリア語、英語の基礎的な読み書きは可能になるという。生徒の多くは「英語が楽しい」と言う。他の民族学校から入学したある中学生は「以前よりハングルの発音がなじみやすい」と言い、「KISに入ってよかった」と屈託のない笑顔で話してくれた。
 日本語を担当する金美那先生は「語学学習の言語の基礎は日本語なので、母語としてきっちり学んでいくことが大切です」と言う。社会科の金太学先生は「日本との朝鮮半島との間で、過去の同じような歴史が繰り返されないように心がけて教えています」と歴史学習の指針を示している。
 金太学、ノエル・スラッテリーの両教員は寮の舎監も務め、日常的に寮生への指導も行っている。
同学園独自のカリキュラムとして、「教養・Liberal Arts」科がある。同学園を卒業しても社会人として生きていける人間形成を目指すもので情報応用力、論理力、編集力、コミュニケーション力などを大学ゼミ方式で養う。
 2月27日には同学園初めての卒業式を迎える。在日のコリア系の学校で韓国、欧州の学校へグローバルな進学を成し遂げた学校はあっただろうか。
 初代校長の朴炳潤氏は同学園の教育趣旨を「植民地史観を乗り越え、(南北)統一教育哲学の実践」と語っていた。同学園は朝鮮半島を客観視しながら、南北どちらにもくみせず、アジアそして世界とグローバルな視点に立ちながら、「多文化共生」「人権と平和」「自由と創造」の教育理念が開花しつつある。