「日韓併合」の1910年から今年2009年はちょうど100年目である。昨年、民団は在日韓人資料館主宰のもとで「在日100年の歴史、後世に誇るべきもの」と題して展示会、講演会を行った。われわれ在日が後世に誇るべきものとは何かと考えさせられてしまった。
100年単位で歴史を見つめ、未来を語り合うことは人類にとって意義ある節目と言える。
今、在日は何に関心があるのだろうか。韓国系同胞を代表する団体である民団は外国人参政権問題を最大眼目にしている。もちろん、日本にいる外国籍住民に参政権を付与することは日本国がより開かれた国際社会へ移行していく証であり、地域住民としての在日コリアンにとって歓迎すべきことである。
しかしながら、地方参政権が実現しても、問題がすべて解決される訳ではない。民団、総連という組織のあり方、民族教育、福祉、人権問題など主体的に取り組んでいかなくてはならない。
古代の先人を見習い文化力向上へ
昨年10月に荒井正吾奈良県知事にインタビューする機会があった。
「奈良での韓国とのゆかりを発掘して、将来につなげていきたい。つなぎの大事な部分ですから、在日の皆さんの出番ですよ。渡来文化が残されていることを在日の皆さんは誇りに思って下さい」と会うやいなや、言われた。
つまり、在日コリアンが歴史の舞台に登場し、新しい東アジア友好親善に積極的に参与していただきたいとの願いなのである。
239年に邪馬台国の倭王に卑弥呼が就き、538年仏教が伝来、702年に国号「日本」を唐に伝えた。701年大宝律令の制定、710年平城京諸社寺の建立などの過程で、朝鮮半島、中国大陸の先人たちが日本国成立に果たした役割、功績は大なるものがあった。
奈良県の公式テキストブックにこう記されている。
「5世紀から6世紀にかけて、大和政権は朝鮮の諸国、ことに百済との交流を通じて、大陸の優れた文化、技術の導入に努めた。朝鮮からは多くの人々が渡来し、農業技術や金属製品の生産など多くの分野で朝廷に奉仕した。文化の発展に大きく貢献した。渡来人によって伝えられた仏教は王族、豪族の間にも広がった。渡来人は朝廷の政務や財政にもその能力を発揮した」
つまり、百済、高句麗、新羅の古代の先人たちが、日本の国づくりの一端を担ったのである。東大寺建立に尽くした国中公麻呂、良弁、僧正の行基は百済系である。行基は668年に河内国・大鳥郡の渡来系氏族の家に生まれた。布教と社会奉仕の功労を偲んで、近鉄「奈良駅」前は銅像が立てられている。
京都大学名誉教授の上田正昭氏は「朝鮮半島からはもの凄く文化的影響を受けている。多くの日本史の教科書の中で、飛鳥文化は東ローマやギリシャ、中国の影響を受けたと書いているが、朝鮮とのつながりを書いてある教科書はほとんどない。とんでもないことだ」と戒めている。
民主党の岩國哲人議員は「漢字を伝えてきたのは朝鮮半島の人々です。現代の特許ということで言えば、どれだけ膨大のお金を、日本の文化の基礎になった漢字に対して払わねばならなかったかを国会で発言したことがあります」と言っている。
弥生時代から渡来人が移住し、稲作技術などを携え、縄文人と混血しながら、今日の日本民族の原形ができあがった。DNAを見ても日本民族は混血している。古代は現代よりも遥かに多民族社会であり、共存共栄社会だったと言える。
古代史研究家の佐藤清氏は「日本国成立の際の朝鮮半島の人々の功績を思うとき、地方参政権付与などは当たり前のことで、論議する必要性はない」と話す。
在日は、はちまきを締めて地方参政権を要求するという闘争型の運動からそろそろ脱却していただきたい。
古代の東アジア史を省みながら、明日の平和確立のために、文化力を基軸に朝鮮半島、東アジアの平和と友好に励んでいこうではないか。
今年2009年を起点に在日は次世代の人材育成と、日本社会にはびこる他民族蔑視感を少しでも是正させるため、歴史文化運動に傾注されることを提起したい。